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本展覧会では,江戸時代の文人たちが遺した書の作品を取り上げます。文人とは,儒学を学び,それを現実の政治や社会に役立てようと,幕府や藩の行政に関わったり,学問所や藩校において後進を指導したり,あるいは民間において私塾を開き,弟子の育成に当たりながら,自らの主張を著作にして世に問う,といった活動をする人たちです。一方で,その余暇あるいは引退後,漢詩・書道・絵画のいわゆる「詩書画」の世界に遊び,多様な作品を遺しています。展覧会では,書の作品にこめられた文人たちの思いを読み解きながら,芸術としての書についても味わって頂きたいと思います。

「2020年度センチュリー文化財団寄託品展覧会 文人の書」は12月11日をもって閉幕いたしましたが、デジタル展示会場は下記の通り延長開催いたします。

 

2020年11月9日〜2020年12月11日 

2020年11月9日~2020年12月31日

2020年度センチュリー文化財団寄託品展覧会

文人の書

文人とは?

書とは?

展示構成

第一部〜第三部の三部構成

実際の展覧会場では、二会場にわたり展示を行なったため、デジタル展示におきましても本構成を踏襲しております。

江戸時代初期から幕末直前までの代表的な文人の書の作品を見ていきます。多くは自作の漢詩文ですが、一行書と呼ばれる大字の掛軸では中国の詩人の詩句を揮毫しているものもあります。また、書簡には漢文のものといわゆる候文のものとがあります。

九州福岡の儒者、亀井南冥[かめいなんめい]・昭陽[しょうよう]親子およびその門下で秋月[あきづき]藩の儒者原古処[はらこしょ]・采蘋[さいひん]親子の作品、さらにその門下の秋月藩医戸原家[とばらけ]の旧蔵書などを御覧いただきます。

戸原家は福岡藩の支藩である筑前秋月藩に代々仕えてきた医者の家で、六代目の一伸(1794-1864)の子に、跡を継いだ一権(1822-91)、勤王の志士として活躍した卯橘[うきつ](1835-63)、別に家を立て医者としての活動のかたわら私塾を開いた東作[とうさく](1837-1915)らがいます。斯道文庫は、戦前福岡にあった時代から卯橘周辺の資料を収集しましたが、慶應に移ってから、東作の二男恒次郎の孫に当たる純一氏より、家に伝わる貴重な資料を二回にわたって御寄贈頂きました。

はじめに述べたように、日本では中世の隠者や禅僧など、漢詩文以外の文学ジャンルを得意とする人、あるいは儒学者以外の身分境遇の知識人、といった流れが近世へと続いていて、それが文人と交流したり、あるいは両者にまたがるような活躍をする人も現れたため、文人の世界に広がりが生まれました。29-31はそういった例です。また、近代社会においても、No.12頼山陽やNo.24亀井昭陽のように、文人の伝統を継ぐ人々によって作品が鑑賞され、大切に保存されたからこそ、これだけの作品が今に伝わっているわけです。しかし特に人気のある文人の作品は、人々の需要を満たすため、写しや偽物も作られていきます。32・33はその例です。これらも文人の文化の享受という意味では貴重な資料です。

3D会場(展覧会デジタル化)

第一展示室(図書館展示室)

上の画像をクリックすると、空間スキャンされた展示会場(外部サイト)に移行します。
矢印キーやクリックを通して、展示会場内を動き回って「鑑賞」してみてください。
会場内の「◎」をクリックすると、作品詳細(本サイトの詳しい解説・釈文等が見られるページ)に移動できます。

第二展示室(アート・スペース)

第一展示室同様、上の画像をクリックすると、空間スキャンされた展示会場(外部サイト)に移行します。
始めは会場入口が見えますが、矢印キー・クリック等でエレベーター前にお進みいただくと、展示室入口が見えてきます。
会場内の「◎」をクリックすると、作品詳細(本サイトの詳しい解説・釈文等が見られるページ)に移動できます。

オンラインギャラリー・トークの様子(動画)

センチュリー文化財団

センチュリー文化財団は、旺文社創業者故赤尾好夫氏が、文字文化の恒久の保存と継承を目的として設立したもので、書画・典籍・工芸美術品など、文字文化に関わる文化財の収集・保存およびそれらを用いた教育・普及活動を行っていましたが2019 年活動を休止し、既に寄託されているものを含め、すべてのコレクションが慶應義塾に寄贈されることになっています。2020年度からは、同財団の寄付金を原資として建設されたKeMCo(慶應義塾ミュージアム・コモンズ)を中心に展観されるほか、本塾において研究・教育に活用される予定です。

斯道文庫

斯道文庫は、麻生商店(現・麻生グループ)社長故麻生太賀吉氏が、1938 年福岡市内に日本・東洋の精神文化の研究のため設立した財団法人・斯道文庫を前身とし、1960 年、慶應義塾大学の附属研究所として再出発しました。財団法人時代からの蔵書を引き継ぎ、古典籍書誌学を中心に研究・教育活動を行っています。 2010 年、開設 50 年を記念して、所蔵・寄託典籍の展覧会を開催し、その全容は『図説書誌学—古典籍を学ぶ』として勉誠出版より刊行されています。